にじゃBOX WWW版 98.10.15

目次


ピクルス、世界へ


 ケメのブランドPickles*のワンコがアメリカの雑誌「Teddy Bear AND FRIENDS」11・12月号に紹介されました。

 私も早速近くの本屋さん(San Mateoの映画館の横)に行って買いました。この本屋さんはそんなに雑誌コーナーが大きくなくて、雑誌の種類もそれほどないので「あるのかな」と心配でしたが、ちゃんとありました。この異国の地(おお、レトロな表現)で友人の記事の紹介を英語で見るというのは、なんとも言えない嬉しさがあります。

  掲載されている場所はこの本の前の方のページ(p.10)で、かつ、左ページの左下という絶好の場所に掲載されているから、沢山の方々からレスポンスがあるかもね。(通販カタログの場合、左ページの左上下、右ページの右上下の4個所が、ぺらぺらめくっていても目に止まるというゴールデンエリアだそうですから。)


 家に帰って、ゆっくり(しか英語は読めない)見ると、記事の内容はちょっと変な感じ。
 「アジアの不況で広告業界の仕事を失った後、Kimikoは自分を励ますためにTeddy Bearを作り始めた・・・・彼女いわく『月収はなくなったけど、特別な時間をもてるようになった!』・・・」
 こういう内容は意外で、かつ、とても面白かった。Teddy Bear(Puppy?)の写真と作品の紹介だと思っていたから。

 で、「なんでこんな変わった記事になったの?」とケメに聞いたら、「売り込みで紹介文を送ったら、載せてもらちゃった」ということでした。なるほど。

 ケメのワンコは今月のオリーブにも掲載されて、すごい反響のようです。
 ケメのホームページにも紹介されてますよ。

  どんどん世界に羽ばたいていくケメを羨ましく思うばかりです。

  ところで、ふと、「いったいTeddy Bearってなんだろう」と思って、調べてみました。
  なんと、アメリカ大統領セオドア・ルーズベルトのニックネーム「Teddy」から来ているのですね。Teddyが、猟で獲物がなかった時に、お使えのものが気を利かして差し出した傷ついた熊を助けたところから来ているとのことでした。知らなかったなあ。 (Segawa)

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(スクープ?)まーろ3人目の男の子誕生!


まーろに3人目の男の子「大三郎(だいさぶろう)」君誕生!
3324g。9月25日に生まれました。母子ともに健康とのこと。
おめでとー!!!!!

大変だぞー、男の子3人は。
がんばってね、パパ。
・・・それにしても鼻筋も通ったはっきり系の顔ですね。もてそう・・・

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きよとびきのよもやまぐたぐた [第4回]


BIKI:最近、運転中にガムを噛む習慣がついてしもて、先週、歯の銀の詰め物がガム といっしょにポロっととれてしもた。アメリカに来る前にアメリカに出張した 時も同んなじことをやってしもたんやけど、ガムくらいで詰め物が取れるのは当たり前かいな?それとも歯科技工士か歯医者の腕が悪いんかいな?

KIYO:ガム噛む習慣やなんて、なんかアメリカンやわ。髪の毛、金髪に染めとんの とちゃう? 

BIKI:トオルとちゃうで、ワシは。

KIYO:えっ?トオルさん今、金髪で手術してんの・・・(話がそれている---) まっ‥ええわ、その取れたと云う銀の詰め物やけどインレーって云いますねん。うち の診 療所にも時々取れたから、そのまま引っ付けてくれって患者さんが来ますけど 、大概がそのインレーの隙間から歯の中の方に虫喰って大穴が開いている事が多いで すわ。

BIKI:げげっ、そうかいな。ヨメさんに取れたところ見てもろたら、「あらま、取 れたはずの下にも銀があるわ。古いやつやろか」っていっとったわ。そんな二重構造 なんてすることがあるんかいな?

KIYO:ふ〜ん。それやったらアマルガム充填云うやつちゃうか。インレーみたいな 、鋳造物を詰めるンやのうて、銀スズ、銅の合金と水銀を練和したやつをね、歯の穴 の中に流し込むの。それやったら、それこそポロッと割れて落ちてくるで。

BIKI:ポロっと・・・インレーが取れることが多い季節とか時期っちゅうんはあるんかいな?例え ば正月は餅で取れることが多いから患者が急増するとか、寒いと強く歯を食いしばる から多いとか。

KIYO:わはは、ほんまやね、粘着性のあるもん食ったら、そら取れやすなるわね。 でも正月はお年寄りの人がモチ食べたいから云うて入れ歯を新調することの方が多い で。
それよかアメリカで歯医者行ったら保険はどうなりますのん?

BIKI:保険の種類によってもちゃうみたいやけど、ワシの場合は、80%くらいはカバ ーされるみたいや。保険もピンキリやから一概には言われへんけどな。なんせ、ワ シはまだアメリカでは歯医者には行ったことがないからよーわからん。そう言えば 、以前ヨメさんが聞いてきた話しで、アメリカの麻酔注射の前の麻酔は「フルーツ味」とかもあっ て、味が選べるとか。ほんまかいなと思うけど。日本にもそんなんあるんか?

KIYO:へぇ〜、そんなんありますの?知らなんだわ。そんな患者さん寄りの事をす るのは、やっぱりアメリカやね。 患者さんにとって病院なんて出来る事なら行きた くないところやからね。何か少しでも気が楽になるよな、サービスがほしいわね。

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滅多に役に立たないアメリカの知識(No.6)


 今回はカルトレインの話。

 カルト・レイン(雨のことなら任せとけ!)じゃなくて、カル・トレインです。
 California Trainを短くした「CALTRAIN」なのだ。

 サンフランシスコには大雑把に言って3種類の電車が走っている。Bartと呼ばれる都市型の地下鉄、MUNIという市電の現代版、そしてこのCALTRAIN。
 自宅側に駅があるけど、こっちに住むようになって、一度も利用したことがなかった。
 なんせ、車社会。よっぽどのことがないと電車に乗ろう、という気になれない。でも、先週、「よっぽど」のことは全くなかったけど、暇だったので乗ろう、ということになった。

 乗った車両はたまたま自転車も駐輪スペースが半分を占めていた。平日なら、このスペースが自転車で一杯になるのだろうけど、乗ったのが日曜日だったので、1台もなかった。
 右の写真は、二階席から撮ったもの。両方の窓際に一列ずつ座席が配置され、中央が1階席が見える吹き抜けになっている。すごくスペースがもったいない話で、「なんでこうなっているんだろう」って随分考えた。

 そのうち、車掌さんが切符を売りに来た。駅の大きさにもよるけど、自宅側の駅では切符は売っていない。車内で買う。その切符が左の写真。
 それで、やっと謎が解けた。車掌さんは1階の通路だけを歩いて、2階のお客さんにもこの吹き抜けを利用して切符を売るのだ。

 まあ、おもしろかったけど、日曜日は2時間に1本しか走っていないので、とっても不便ということを身をもって体験してしまった。

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[Short Short]

脇道

 勢川びき

  「佐賀くん、まだ出来ていないのか?冗談だろ?」
 「か、課長、す、すいません、実は   」
 「もう、いい!君の言い訳はやたら長いだけで聞くだけで疲れる。ちょっとコピーを頼んだだけで、もう2時間も経っているんだぞ」
 すいません、と、頭を下げたままの佐賀の手から課長はコピーの原稿を取り上げ去っていった。「最初から君に頼めば良かったんだ。佐賀みたいな男に情けをかけて仕事を振った私が馬鹿だったのだ」課長はそう言って女子社員に原稿を渡した。

 何をするにも要領が悪い。とにかく時間がかかってしまう。それが佐賀という男である。
 しかし、その理由は、決して佐賀自身が悪いだけとは言えなかった。彼は「脇道に逸れる」運命の星の元に生まれていた。
 佐賀が何かをしようとすると、何か別のことが起き、その別のことを解決しようとすると、また別のことが起き   この繰り返しをしているうちにどんどん時間ばかりが過ぎてしまい、元々やりたかったことがなかなかできないのであった。
 今日の課長から頼まれたコピーも、コピーをしようと思ってコピー機まで行くと、紙がない。いつもはコピー機の横に積んである予備の紙もない。仕方なく、備品庫の部屋まで紙を取りに行くと、備品庫の中の電球が壊れていて、中が真っ暗で見えない。懐中電灯を借りに総務まで行くと、総務の部屋は女子社員が悲鳴をあげて逃げ回っている。どうしたのかと聞くと、どぶねずみが現われて、部屋の中を走り回っているらしい。佐賀がやっとの思いでねずみを素手で捕まえて、窓から放り出すと、きたない、不潔、と、罵声を浴びさせられ、感謝の一言もない。トイレで手を洗ってからもう一度総務に懐中電灯を借りに行くと、懐中電灯は総務ではなく警備に借りに行ってくれとのこと。守衛のいる裏口に行くと、搬入業者が倒れかけた段ボール箱を必死に支えようとしていたので、それを手伝って   というようなことをして、やっとコピー用紙を手に入れてオフィスに戻ったら2時間が経過していた。
 いつもこの調子である。だから、誰も佐賀には仕事を頼まない。

 仕事だけではなかった。どちらかと言えばモテる顔立ちの佐賀だが、女性に関してもいつも脇道にそれてしまい、本当に好きな女性からは見向きもされずに終わってしまうのが常であった。
 課長に怒鳴られ、落ち込んでいる佐賀の頭には、初恋の女性の健やかな笑顔が浮かんでいた。高校時代だった。未だに辛いことがあると頭に浮かぶのはこの初恋の女性だった。彼女に告白を決心した日も、同じように色々なことが次から次へと起こり、結局機会を逸してしまった。その後、彼女への想いは続いたが、脇道に逸れる運命によって、彼女は徐々に佐賀から離れて行き、今ではどこに住んでいるのかも分からなくなってしまった。

 最近は、一人で居酒屋で酒を飲む日が続いていた。酒を飲むのも一筋縄ではいかない。様々な邪魔が入り、酒を口にできるのは深夜近くになることが多かった。

 今日もやっとありついた酒に溺れて、佐賀は千鳥足で自宅に向かっていた。
 「おにいさん」
 道端の占い師が声をかけた。また脇道に逸れる。まっすぐに家には帰れない。
 「見ましょう」
 どうせ、ここを振り切っても何か別のことが起きる。佐賀は言われるままパイプ椅子に座った。
 「ははぁ。こりゃ、すごい。でも大丈夫。今のアナタの仕事も脇道の一つですよ」
 なんでこいつは俺が脇道に逸れることを知っているのだろう---そう、酔っ払った頭でぼんやりと考えていた。
 「でも、人生って、結局脇道の連続です。その途中に良いこともあります。とにかくアナタはタクシー運転手に転職しなさい」

 翌日---
 佐賀は会社を辞職し、タクシー会社に転職した。別に占い師の言葉を信じた訳ではなかったが、今の会社には未練はなかった。
 しかし、タクシー運転手になっても「脇道に逸れる」運命には変わりなかった。お客さんに言われた場所に向かおうとすると、渋滞につかまり、抜け道に逃れると工事にぶつかり、前を走っていた車が突然パンクして修理を手伝う羽目になり   散々だった。自分一人が悲しくなるだけでなく、お客さんにまで迷惑をかけるので、より質が悪かった。
 だが---
  一ヶ月後。佐賀は「最優秀売り上げ賞」をもらった。不況のため近距離のお客さんばかりの状況で、佐賀はやたらと脇道に逸れて遠回りし、時間がかかるため、売り上げのトップとなったのだった。
 「やっと天職に出会った」
 佐賀は自分の運命を怨むことを止めた。

 *   *   *   *   *

 「おいおい、またかよ」
 電柱が倒れ、修理のために通行止めになっている様子を見て、客が呆れて怒り出した。
 「ここでいいよ、降りる。あんた、何か憑いているんじゃないの?」そういって、客は出ていった。そのドアが閉まる前に、「お願いできます?」と言って、女性が顔をタクシーに入れてきた。
 「助かったわ、こんな脇道でタクシーを拾えるなんて。ラッキーね。あら?佐賀さん?お久しぶりね」
 初恋の女性だった。脇道もいいもんだ。

(おわり)

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