にじゃBOX WWW版 98.12.16

目次


きよとびきのよもやまぐたぐた [第5回]


KIYO:もう年末やね。今年はオリンピックとサッカーワールドカップとビックイベン トが二つもあった所為か、特に1年が早く過ぎたような気がするわ。気が付いたら1 2月で、郵便局の前通ったら年賀状売っとたから「あっ、そうやそろそろ用意せな。 」って、急いで意識を切り替えてる、何か情緒がなくて嫌やな。BIKIさん、アメリカ の年末はどんな感じですのん?

BIKI:11月の最終週の木曜日がThanks Giving Dayで、これ以降は、「今年はもう終 わりや。クリスマスまで思いっきり休んで楽しもうや。もう、働かへんで!」ちゅう 感じになって、全てが止まるんや。みんな、クリスマスの飾り付けに注力して、仕事 にならへん。でも、日本と違って、TVはあんまし年末特番はやらへんし、レコード 大賞みたいな「年末でっせ」みたいな番組はあらへん。クリスマス・クリスマスする だけや。

KIYO:Thanks Giving Day の話が出たんで、ちょっと聞きたいねんけど日本で例えた らどんな感じの祝日になりますのん? それとやっぱり誰か知り合いのアメリカ人を 訪ねて七面鳥食べたりするわけ?

BIKI:まるで日本の正月なんや。つまり、基本が「家族」。色々なところに散らばっ ている家族がThanks Giving Dayだけは寄り集まって、七面鳥食いながら仲良くする んや。だから、みんな家に閉じこもって過ごすんで、町はこの日は本当に静かや。店 も大体閉まっとる。

KIYO:核家族で過ごすアメリカの人は、こういう時にお互いの絆を確かめあうんやね 。

BIKI:ところが、この一日だけ閉じこもっていて、その反動で、次の日(大体休み)は 、あちこち大混雑になるんや。お店もEarly Bird Salesとかいって朝6時から10時く らいまで特売やったり。昨年はこの"after Thanks Giving Day"にDisney Landに行っ て、えらい目におうたわ。すごい人やった。

KIYO:日本の場合は区切りが大晦日にあるから、とりあえずそこまで頑張りますやん 。年末ギリギリまで働いてでも支払を済まして、スッキリせな新年を迎えられへんで しょ。初日拝んで、初詣でとか書初めなんかして、昨年までの思いを一掃して新しく 迎える年に願いを掛けるやない。そう云う感じはアメリカにもあるんやろか?

BIKI:うーん、あんましないんとちゃうやろか。クリスマスカードには「よい年を」 みたいなメッセージが書かれとることもあるけどな。日本みたいに歴史が長い国は 「いっぺん、このへんでチャラにしとかんと、古い垢が溜まり過ぎるわ」ちゅうよ うな感じがあるけど、アメリカは「わしらは世界最高の国やけど、唯一『歴史が短 い』ことだけが不満や。そやから、チャラにはせぇへん!もったいない!」・・・ かな?無理な解釈やけど・・・

KIYO:日本の年賀状ってね、今みたいに年頭の挨拶を元日に送るなんて云う習慣は明 治に入ってからなんやて。ほんで一般に広がったのは、郵便局が年賀葉書を取り扱う 明治32年頃からの話らしいから、100年位の歴史しかないいんやね。もしかしたら、 日本人のこっちゃからクリスマスカードを真似して始めたなんてね。その年賀状やね んけど、BIKI さん宛てには何処に送ったらええんやろ。

BIKI:アメリカの今住んどるところに決まっとるやろが。郵便はちゃんと配達されるで。もちろん、e-mailでもええで。

KKIYO:日本に帰って来て私等友人とお互いの絆を確かめ合うって事はせえへんの?

BIKI:せやから、アメリカでは正月ちゅうのは普通の祝日扱いなんやって。まあ、出張で帰ったら酒のみに行くわな。そん時はよろしう。

* イラスト by きよ


イラストが本文とは関係ない物になってしまいましたのでPSのおまけ。(KIYO)

[PS]
KIYO:今年の流行語大賞はパイレーツというお笑いタレントの「だっちゅーの!」と云 うギャグ?
胸の谷間をアピールして「ムニュッ」、「ホントは見たいんだろ!」 「せーの、だちゅーの!」何がギャグなんかよう分からん。吉本ギャグで育った関西 人には何とも馴染めんと自分は思う・・・が、嫌や、嫌やと思いつつチャンネルが合 ってしまうと「ムニュッ」の部分はチェックしてしまうのは、関西育ちとは関係ない か・・。

BIKI:そうやったんか。流行語大賞で選ばれたんは知っとったけど、そんな裏があったとは・・・。日本はええなあ。なんとなく。

この号の目次へ戻る


滅多に役に立たないアメリカの知識(No.7)


クリスマスです。 あっちこっちがクリスマス・クリスマスしています。

私の家の近所も写真のような電飾の家がいくつもあります。写真では電飾の光の変化がうまく伝わらないのが残念です。

今年は、我が家も本物のクリスマスツリーを買いました。

ハロウインの時にかぼちゃを売っていたスペースがクリスマスツリー売り場になっていたりします。 買ったツリーは中くらいの大きさで高さが165cm、直径が110cm。値段は税込みで$30ちょっと。私のミニバンに辛うじて入りました。 買って帰って、まず行ったのが、土台として十字に幹に直接打ち付けてあった板の取り外し。
いやあ、これが、本当に大変でした。生木に刺さっている10cmの釘を抜くのが。

そして、十字の板の代わりに台として取り付けたのが、右の写真のクリスマスツリー専用スタンド。特売で$7。
これも実は取り付けが結構大変で(必ずといっていいほど、アメリカで入手できる製品はネジ穴がいい加減)、ネジを回すのに指が痛くなってしまいました。
このプラスチックの土台に代えると、この中に水を入れられるので、ツリーが長持ちする(らしい)。
今年、初めてツリーを買ったので、飾りも入れると、$100以上投資してしまった。
ヨメサンの話によると、クリスマスの後にツリーのゴミ(?)回収日があるそうです。

この号の目次へ戻る



びきびきしながらつぶやきぽろぽろ(No.1)

 勢川びき
このコーナーでは、びきくんがTVとか見ながらヨメサンにブツクサ喋っている内容を紹介します。
(ヨメサンがまともには聞いてくれないので・・・)

[福祉目的税]
 消費税が「福祉目的」に限定されるようになったとか。
 ふーん。
 まあ、いろいろ問題もあるのでしょうが、どうせやるなら、もっと極端に推し進めましょう。
 「福祉」に目的を絞るのだったら、ちょっと「寄付」に精神が似ているので、もっと「社会貢献」の意味合いを前面に出しましょう。
 今は消費税は一律5%だけど、寄付だから、5%は最低限度で、寄付したい人は6%でも10%でも払えるようにしましょう。
 スーパーのレジで「じゃ、今日は8%にしておくわ」とか言えるようにしましょう。
 全体の金額が膨大なので、凄いお金が集まります。今の不況の大きな原因の一つが「買いたいもの、払いたいものがなあい!」ですが、みんな実は「他人のために役立ちたあい!」と結構思っているものです。
 「だめだ、だって、その管理が大変で、ごまかすやつが出てくる」とか、色々な問題もあるでしょうが、それは誤差です。
 いい加減とはいっても、国が扱うほうが、怪しい宗教団体のやっている寄付活動よりはよっぽど安心できます。
 みんなで献金しましょう。

[イラク攻撃]
 今日(アメリカ12月16日)、アメリカがイラクを攻撃しました。戦争です。
 ところが、TVは、普段と変わらず、いつもと同じ時間にドラマやコメディーをやっています。もちろん、ニュースはこの戦争を大きく取り上げてはいるけれど。
 戦争ですよ、戦争。
 とんでもないことなんですよ。
 どうして実感が伴わないのでしょうね、この国は。
 自粛、という精神は大嫌いだけど、もうちょっと真摯に自分たちの税金で行われていることを受け止めたら!
 わたしゃ、怒っておるのです。

この号の目次へ戻る



[Short Short]

 勢川びき


 「さあ、あなた、行きましょうよ」
 聡子が私の手を掴んで玄関の方へ引っ張った。私たちの後ろから「奥さん、あまりゆっくりしないで下さいよ。最近は日が短くて作業時間もあまり余裕がないんだから」と、ヘルメットを浅めに被った解体会社の作業員が聡子を急かした。聡子は全く無視している。


 「ねえ、あなた、さあ」
 ぐっと手を引っ張られ、私はゆるりと玄関の方に歩き出した。
 我が家---だった家の玄関を二人でくぐった。私が経営していた会社が倒産し、担保にしていたこの家を手放したのだった。三十年以上この家にはお世話になった。そして、全てを失ってしまった。殆どの財産も没収された。私はもう生きる気力を無くしていた。
 『それにしても、何故聡子はこんなに楽しそうなのだろう』何も考えたくない私の頭にも聡子の活き活きとした様子が不思議に感じられた。
 「あなた、あまり時間がなくってよ」
 この家と伴に長い時を過ごしてきた聡子の髪はもう半分以上白くなっている。しかし、その顔は十代の少女のように輝いている。
 「あら、いつもの癖で靴を脱いでしまったわ。ほほほ、おかしいわね、もう少しでこの家は解体されるんだから、履いたままでいいわよね」
 私はぼーとしていたので靴は履いたままだった。そのまま聡子に手を引かれて家の中に入っていった。聡子と手をつなぐなんて何十年ぶりだろう。


 「あなた、これ覚えている?」
 玄関の床に丸い跡がついている。
 「え、ああ、なんかの鉢があった跡だろ」
 何故こんなことを聞くのだろう、面倒くさい。
 「そうじゃなくって、何故ここに鉢が置いてあったか覚えている?」
 「何故?」
 「ほら、この鉢の跡の真ん中の床が大きく凹んでいるでしょう。これよ」
 確かにはっきりと凹んでいる。
 「やっぱり忘れているのね。ボーリングブームの時にあなたが酔っ払って帰ってきて、『お土産だ!』とかいってボーリングのボールを投げてここに落ちたのよ。とりあえずその凹みを隠すためにここに鉢を置いたままだったのよ」
 聡子は嬉しそうにその凹みを撫ぜている。私はさっぱり思い出せない。
 「えーと、次は--- 」
 聡子が私の手を引っ張った。狭い廊下から本棚も運び出されて広くなっている。
 「ほら、ここ。本棚があった壁よ。この穴覚えている?」
 本棚が置いてあった壁の膝のあたりにスイカほどの大きさの穴が空いている。
 「これも覚えていないの?」
 私は黙っている。本当に覚えていないのだ。
 「これもあなたが酔っ払って帰ってきて、仕事がうまく行かなかったらしくてヒステリーを起こして壁を蹴って穴を空けたのよ。それを隠すために本棚を置いたの」
 それから、聡子は風呂場の傷やら、階段の板のめくれやら、天井のしみなど、様々なこの三十年の跡を指し示しては、嬉しそうにその原因を説明した。その原因の全ては私だった。そして、その全ての跡は聡子によってうまくカモフラージュされていた。
 この長々と続く聡子の説明にうんざりしながら、私はなされるままに手を引かれていた。


 聡子はいったい何をしようとしているのだろうか---
 「聡子---」
 「え?何?あ、これはさすがに覚えているでしょう、この台所の床の傷」
 流石にこの傷だけは忘れていなかった。私が外に遊びで作った女がこの家に突然やってきて大暴れし、台所で包丁を振り回した挙げ句、最後に捨て台詞とともに放り投げた包丁が見事に床に刺さった傷だった。
 「この傷だけは隠す気がしなかったのよね。たまには思い出してもらわないと。あなたはすぐになんでも忘れるからね、家のことは」
 そうか。なんとなく分かってきたぞ。これは聡子の復讐みたいなものなのだ。仕事と女で家をぞんざいにしてきた私に、聡子は「こうやってあなたの不始末も見えないようにして家を守ってきたのは私なのよ」と言っているのだ。それで、こんなに楽しそうなのか。


 「ええと、大体このくらいね。じゃ、最後はこっち」
 聡子に相変わらず手を引かれて、私は玄関脇の応接間に連れて行かれた。
 「これは何の跡だか分かる?」
 応接間の壁には掛けてあった額縁の跡があった。しかし、それだけだ。
 「絵があったところだな。しかし、何も傷や穴はないぞ」
 そういう私の顔を見て、聡子は嬉しくてたまらない様子だ。
 「ふーん、思い出せないんだ」
 私は少し近づいて壁を見てみた。やはり何もない。
 「じゃ、いいわ。これでおしまい。この家ともお別れね。さ、行きましょう」
 最後は何も説明もせずに聡子は私を外に連れ出した。そして作業員に挨拶をして、二人でバス停の方に向かって歩き出した。背後で解体作業の轟音が始まった。二人は振り向かなかった。


 「ね、何か食べに行かない?おなか空いたわ」聡子は明るくそう言った。私が外食する金を持っていないことはよく分かっているはずだ。「大丈夫、お金ならあるわ。少しだけどね」そういって、聡子は無造作に一万円札を取り出して、ひらひらと見せた。私は不意をつかれて「え」と声を発してしまった。ここ1ヶ月は赤貧の暮らしで、毎日インスタントラーメンの生活だったからだ。
 「どうしたんだ、その金」
 「やっぱり、覚えていないのね。あの額縁の裏に隠してあったあなたのへそくりよ。家のことなんか全然気にしていないから自分のへそくりまで忘れてしまうのよ。家財を持ち出す時に気がついたのよ」
 私の目からはすーっと涙がこぼれ落ちた。
 「聡子---私は---」
 声にならなかった。
 聡子は相変わらずとても楽しそうな顔をしていた。『面白いから、しばらくはそのへそくりで買った宝くじが大当たりしたことは黙っていようっと』

(おわり)

この号の目次へ戻る


ホーム