勢川びき
1999年10月22日

No.12「退階」

 一昨日(10月20日)、病院へ行き7階のICUに入ろうとしたら、知らない看護婦さんから「Mr.Segawa、江実は15階に移ったよ」と言われました。最近、私の顔が売れていて、知らない看護婦さんからも良く名前で声をかけられます。

 「やった!退階だ!」
 前回の報告でも書いたように、手術直後の子供たちが入る6階・7階のICU(集中治療室)から新生児用のICUがある15階へ移ることを、退院ならぬ『退階』と名づけて、江実の快復への足取りの大きな一里塚としてきました。
 とっても嬉しくて、軽い足取りで7階のエレベータに乗ったら、大きなおっさんが一人いました。エレベータの内壁についている行き先の階を示すボタンを見ると、8階から15階のボタンが全部押されているのです。大きなおっさんは何食わぬ顔で8階で降り、一人残された私は各駅停車のエレベータに乗って、はやる気持ちを押さえながら、15階に向かいました。
 嬉しかったので、あまり腹は立ちませんでしたが、一体あのおっさんは何のためにこんなことをしたのだろう、と不思議でした。15階までの道のりはとても長かったね、と、言われているような気もしました。

 手術したのが9月21日。退階できたのが10月20日。丁度、一ヶ月。あれだけの手術にも関わらず、たった一ヶ月でここまで快復したのは、大した物です。毎日病院通いを続けていると、とても長く感じられたけど。

 15階のICN(IC"U(Unit)"ではなく、育児室の意味のNursery)----。

 そこは、江実が生まれてすぐに入って、手術直前までいた部屋です。この部屋から手術室の階に運び出される時に、
 『江実、必ずここに帰ってくるんだよ』と、強く願いました。手術中に10%、その後48時間中に10%、死んでしまうリスクがある、と言われた手術でした(すごく楽観的なタイプの外科医の言葉だけに重かったです)。今でこそ、この確率をこのホームページで書ける気持ちになりました。

 まだ、色々ありそうだけど、まずがは大きなマイルストーンをクリアしたな、江実。
 現在の心配事項は肝臓。黄疸の原因となるビリルビンの値が以上に高い状態が続いていて、まだ原因がはっきりしないのです。素人考えでは、この体で手術後に大量の薬物を摂取してきたのが原因だと思うけど。

 とにかく、退階。
 翌日、さっそく私は散髪に行き、すっきりしました。柄にもなく、「退階するまでは髪の毛を切らない」という願をかけていましたので。

 がんばれ、江実。自分の生命力で。


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