勢川びき
1999年12月13日

No.23「ふたたび」

 昨日、週2回家に来てくれる看護婦さんに、一昨日から顕著になってきた江実の症状を伝えました。江実の機嫌がとても悪く、かつ、息遣いが苦しそうなときが多くなっていました。
 お得意の笑顔も一昨日からは殆ど見られなくなっていました。

 看護婦さんのリコメンドで、とりあえず、割と近くの病院のER(Emergency Room)に連れていきました。10日ほど前に別の病院のERに連れていった時とは、全然対応が違い、あっという間に緊急処置室に連れて行かれたと思うと、10人近くの看護婦やドクターが寄って集って慌しく様々な検査が行われました。すごく緊張感がある雰囲気でした。10日前のERの時は、時間がのんびり過ぎただけで、看護婦さんや医者の数も少なく、「これがERなのかな」と思ったのとは大きな違いです。
 結局、色々と検査はしたものの、「この子のことを良く分かっている元の病院に送るのがベストだ」という結論が出ただけでした。

 江実が産まれ、手術をした大学病院UCSFから、間もなく救急車でドクターを含んで4人のスタッフがやってきました。
 妻はその救急車に乗り、私は自分の車でUCSFに向かいました。救急車の方が絶対早く病院に着くと思っていましたが、私の方が早く着きました。江実の症状がそれほど急を要するものではない、との考えで、普通の速度で走ってきたようです。私は無意識に少し飛ばしていたかもしれません。

 昨日から今日にかけて、様々な検査が行われました。まだ検査結果の詳細は聞いていませんが、肺の周りやお腹に水が溜まっていたのかもしれません。
 また、利尿薬を増やしたせいか、普通より大きかったお腹が小さくなって、一生懸命徐々に増やしてきていた体重も一晩で200g以上減りました。  江実本人は、とりあえずの処置が聞いたのか、穏やかな顔になって、見なれた病院のなかをきょろきょろと見まわしています。

 昨夜は、11月27日の退院後、初めての「お泊り」となりました。若い娘の外泊を認めざるを得ない親の心境は辛いものがありましたが、一方で、退院後続いていた深夜を含めての3時間ごとの授乳やその後の状態監視、6種類もの投薬、などの大変さから開放され、妻、私の母、私は久々にゆっくり朝まで眠ることができました。目の前で常に江実がいて、辛そうな症状を示したりすると、どうしても「何かいけないことをしてしまったのでは」という疑心暗鬼に陥ってしまいがちですが、病院にいれば、これ以上のケアはないので、却って安心、というのが本音です。

 今日、江実が産まれる前から超音波診断をしてくれていたドクターに会いました。彼の話によると、心臓の手術で弁を作ったものの、その弁からのリークがあり、それが原因で「体重があまり増えない」「息遣いが荒い」などの症状が出ている可能性があるということです。そのため、明後日、カテーテルを使った心臓の機能の詳細な検査を行うこととしました。
 その検査結果によっては、再手術が必要となるかもしれません。

 この原稿を書いている横に今は江実はいません。
 半月ですが、一緒に自宅で過ごし、本当の家族になっていただけに、やはり空虚感があります。

 帰ってこいよ、江実。元気になって。「早く」とは言わないけど。  

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