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カウントダウン

勢川びき
1998年1月

 アメリカ西海岸に赴任して十一ヶ月が経った。
 異国で迎える初めての正月である。クリスマスが年間で最大のイベントであるアメリカでは、大晦日・正月は静かなものである。

 テレビでは日本語放送でNHKの「ゆく年くる年」をやっている。十二月三十一日の深夜十一時五十分過ぎである。 もちろん、この番組は日本のもので、時差が十七時間あるここアメリカ西海岸で見ているものは再放送である。
テレビからは低い落ち着いた除夜の鐘の音が流れている。
十七時間前のものとは言え、やっぱり年を越すのにはこの雰囲気が日本人にはぴったりだ。

 振り返ってみると、慣れない生活や分からない英語で本当に苦労した年だった。まもなく始まる新年では、もっとアメリカの文化に浸ってアメリカを楽しむことにしよう。

 と、思ったら、突然こんな録画された日本の番組を見ている自分が情けなくなった。

 「そうだ、アメリカらしい新年を迎える番組をリアルタイムで楽しまなくては!」

 ふとテレビ画面に出ている時計を見ると既に十一時五十九分ではないか。
 私は慌ててチャンネルを変えた。
 突然、大音響で「ナイン、エイト、セブン・・・」とカウントダウンの大歓声が飛び込んできた。
 おお、これがアメリカだ!おっと、この場所は知っているぞ。ニューヨークのタイムズスクエアだ。すごい人出だ。
 「スリー、トゥー、ワン、ゼロ!」
 バババーンと花火が上がり、大騒ぎである。

 「よかった。何とか間に合って。新年をつまらない録画で迎えるところだったよ」
 そう言った私の顔を妻が覗き込んで、「あら、ニューヨークは東海岸だから、これも録画じゃないの?」と、小ばかにしたようにつぶやいた。
 そうだ・・・3時間時差があるんだ・・・これも録画だ・・・新年もアメリカを楽しむようには、なかなかなれそうもない。

[おしまい]


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