<< 第5回>> 勢川びき 2000年5月28日

新・本能

 江実の話を書き出したときに「親の本能として子供を守りたい」と書きました。
 本来、本能というのは個体に依存するのではなく「種」に依存するものです。
 殆どの生物の本能は「その種を守ること」から端を発しています。人類も例外ではありません。だから「親は子供を守りたい」のが本能でした。

 しかし、人類は他の生物と違った特殊な局面を迎えようとしています。人口が爆発的に増え、地球という場が人類を支えきれなくなりつつあるのです。「人類という種を守るためには人口が増えないようにしなければならない」・・・これが今の人類が持つべき本能なのかもしれません。私が持っている本能は古い世代のものなのです。
 そう考えると、最近の事件が「人を殺してみたかった」だの「子供が憎たらしいだけでかわいいとは全く思えなかった」というような理由で起きているのは、新しい世代の本能に基づいているような気がしてきます。

 ちょっと前のバブル時代には、女性が「3高」というものさしで男性を秤にかけると言われていました。「背が高い」のもその一つでした。これも「種を守るために背が高く体格が大きい(強い)子供を作りたい」という本能に基づいていたのでしょう。でも、最近はそういう言葉があまり聞かれなくなりました。人口が爆発しても人類の体型が小さければ、食料/エネルギーの問題はだいぶマシになります。まだあまり主流にはなっていないけれども、女性たちの多くが新しい本能に基づいて「私は背が低い人が好き」と言い出す日も近いかもしれません。


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